温暖化ガス削減目標の引き上げに伴う空調設備の取扱について

2021.04.30

 

地球温暖化

2021年4月22日。日本政府は2030年における温室効果ガス削減目標を引き上げることを発表しました。現状の26%から46%に大幅に引き上げた形になります。

 

 

詳しくない人でも体感的に大きく上がったことがわかりますね。果たして達成可能なのでしょうか。
話題になっているニュースでありますが、これに伴い大きく変わる可能性があるのが、私たちの取扱う空調設備を取り巻く環境です。

 

おそらくフロンガス使用機器点検義務の厳格化、機器廃棄の更なる厳格化につながっていくと思われます。今回は気になる補助金関連も含めて少し触れてみたいと思います。

 

 

空調設備とフロンガス
フロンガスの機器点検と廃棄の在り方
空調関連の補助金について

 

 

空調設備とフロンガス

温室効果ガス削減目標の引き上げによりなぜ空調設備関係が影響を受けるのか。
それは空調設備のほとんどが温室効果ガスの一つであるフロンガスを使用しているからです。

 

 

炭素とフッ素の化合物であるフロン。無毒性、不燃性、化学的安定性といった優れた性質を有しており、空調設備や冷蔵庫などで広く使用されています。

 

フロンガス

フロンガスが温暖化と関係している。ニュースなどで多くの方が耳にしたことがあるのではないでしょうか。
フロンガスの大気放出は法律にて制限されており、段階的に製造が縮小・中止されていっています。

 

 

しかし、先述の通り、いまだ空調設備にはフロンガスが広く使用されているというのが現状です。
理由は簡単。フロンガスの代替品がまだ広く浸透していないためです。フロンの機能を二酸化炭素などで代用する製品なども徐々に生まれつつありますが、既存のものと比べるとどうしても費用がかかってしまいます。

 

環境問題が注目されるにつれ、研究は進みつつありますが、世間に浸透するのはまだ先の話となるでしょう。

 

 

フロンガスの機器点検と廃棄の在り方

エアコン内部

温室効果ガス削減目標の大幅引き上げは、まずこれらフロンガス使用機器点検の在り方に影響を及ぼすと思われます。

 

 

現在、フロンガスを使用している20馬力以上の空調設備に関しては年に1度の点検が義務付けられています。これは空調設備の配管に広く銅が使用されており、古くなった配管が割れ、ガスが漏れ出てしまう可能性があるからです(銅は熱伝導率が高く、強度が弱い)。

 

 

しかし、現時点では点検義務は従わなかったところで、罰則までには至りません。このため、一部大手の工場などを除いて定期的な点検作業を行っていない企業が多いというのが現状です。

 

ビニールで覆いメンテナンス

当社は「冷媒フロン類取扱技術者」の資格を有しており、ガイドラインに則って 空調設備の取り付け・点検業務を広く行わせていただいておりますが、「冷房が効きにくくなった」など、いざ機器にトラブルがあってからのご依頼が多数を占めています。

 

 

温室効果ガス削減目標の大幅引き上げはこの点検義務の厳格化につながっていくと考えられます。

 

この点検義務の厳格化に続き、もたらされると思われるが機器廃棄方法の更なる厳格化です。
令和2年4月1日 改正フロン排出抑制法が施工されました。これは機器廃棄の際、フロン類をしっかり回収しなければ、行政指導などを経ることなく即座に刑事罰(罰金)とするものです。

 

 
 当然フロンガス回収は然るべき資格を有した者が、然るべき回収機を使って行わなければなりません。しかしエアコンの取り扱いをメインとしていない業者などは専用の回収機などを有していないこともままあります。このため家庭用エアコンの回収をお願いする時などは注意が必要かもしれません。

 

 

 フロンガスを処理する中間処理施設もまた、フロンガスの扱いについて慎重になっています。フロンガスを使用している機器の取り付け、回収の際はしっかりと資格・機材を有しており、実績のある業者さんにお願いした方が良いでしょう。

 

 

空調関連の補助金について

 国が推進するものに関しては、補助金が出るのが世の常。もちろん今回の件も補助金は既に存在しています。しかし、「工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業」など大規模事業向けの補助金が多く、飲食店や中小企業向けに扱いやすい補助金が出ていないというのが現状です。

 

 しかし、今回の温室効果ガス削減目標の大幅引き上げにより、新たな、そして広く使用できる補助金が組まれる可能性は十分あると思います。これまで規模が大きすぎると感じられていた企業さんも参画できるようになるかもしれません。

 

 余談ですが、コロナ関連の補助金も同様ですね。「大規模感染リスクを低減するための高機能換気設備等の導入支援事業」などコロナウイルス関連で空調設備導入に関する補助金は出ていますが、こちらも大規模事業者向けで広くは使いにくい…。

 

 コロナウイルス対策で空調設備見直しを検討されている方は、もしかすると今後組まれる補助金に着目する方が良いかもしれません。